日本三名橋のひとつと言われる錦帯橋。
その素晴らしさはその姿の美しさだけではなく、江戸時代に作られた橋が250年以上もの間流失することがなかった頑丈さです。
「流されない橋を作りたい」という藩を挙げての強い思いが、当時の技術を結集して作り上げた錦帯橋。
今回は橋のアーチや橋脚の構造、技術の伝承などについて解説します。
錦帯橋について詳しく知りたい方はこちらもどうぞ・錦帯橋はなぜ岩国に、橋が出来上がるまでの歴史
アーチの構造
5連のアーチからなる錦帯橋は、ほんとに美しいですよね。
錦帯橋は世界的にも珍しい、木造のアーチ橋というして知られています。現在は6種類の木材を適材適所に使用しています(マツ、ヒノキ、ケヤキ、ヒバ、クリ、カシ)。
5連のアーチのうち、真ん中の3つのアーチは完全なアーチですが、端の二つのアーチは平らに近いアーチになっています。
真ん中の三連のアーチはおよそ35メートル。25mプールより大きいです・・・(;^_^A。
そういえばこんな大きなアーチ、江戸時代にどうやって組み立てたんでしょうね?
中央の3連は、迫持式(せりもちしき)といわれるアーチ構造。このアーチ構造は長崎の眼鏡橋もそうですね。小さめの石やレンガを、両側から徐々にもち出して円弧状に積み上げ、上からの重さをシッカリと支える構造です。
錦帯橋の場合、アーチを構造する最も大切な部材を、桁(けた)と言います。アーチの半分部分に1番桁から11番桁まで11本の桁が使われています。
1番から4番までの桁は、隔石(へだていし)という石を使って橋脚に固定していました。昭和の再建時には沓鉄(くつてつ)と言われる金具が使われています。
2番桁からは桁の間に楔を挟んで勾配を緩め、桁先を迫り出していきます。そして両側の橋脚から延ばした桁の間に棟木を入れて、アーチの半分と半分を結合します。
【岩国市公式ホームページより引用】
昭和の再建では、アーチ部分は陸の上で仮組をして微調整をし、それから河川の上でスムーズに組めるようにしていたそうです。
なるほど。両端から組み立てて、真ん中でアーチの半分ずつを結んでいるから、30m以上の大きなアーチを作れたんですね!
流されない橋脚の構造
橋脚が少ないアーチ橋は、川幅の狭い場所にかかるものでした。
川幅の広い錦川に架けるにはどうすればよいか・・・錦川に橋を架けることを悲願とした藩主・吉川広嘉は悩みます。
ある日、西湖について書かれた本『西湖志』を見た藩主。本には5つの小島にかかる小さなアーチ橋が描かれていました。そこから(錦川に小さな島をいくつか作ってアーチを架ければいいのだ)とヒントを得るのです。
その「小さな島」が、橋脚です。
川床に2~2.7メートル下までマツの杭を打ち込み、基礎のうえに石を積み上げますが、橋桁の外部には石を積み上げ、内部には丸みをおびた川石や土など埋め込んでいます。
中には小石や土がつまっていたとは、びっくりです。すべて石なのかと思っていました。
こうして積み上げた石の島と、木でできたアーチの橋桁をつなぎ合わせます。でも石と木を、どうやってつなぎ合わせたんでしょうね?
桁を受けるところには隔て石を取り付け、桁を受けます。その上に、重しとして大きな石を乗せ、周りを土で固めました。
土を使うことで、土の部分が朽ちてしまうことから、およそ20年ごとに架け替えが必要だったそうです。
錦帯橋は100回以上にも及ぶ改修を行っていますが、なるほどこのためだったのですね。
錦帯橋を維持する技術の伝承
何度も行われる改修は、大工技術を伝える機会でもありました。書いて伝えるのではなく、言葉で伝える「口伝」による技術の伝承。
木材ひとつひとつを見て適材適所に配置する技術や、反りやたわみを微調整する技術など、錦帯橋を支える技術は歴代の大工さんの口伝が支えてきました。それは令和になった今でも変わりありません。
現在は、橋脚に土や石ではなくコンクリートを作っているので朽ちることが少なくなり、次の架け替えは50年後になっているそうです。
錦帯橋には1本も釘が使われていないの?
「錦帯橋には1本も釘を使ってない」と聞いたことがあるのではないでしょうか。
わたしもそう聞いていました。釘を使わずにこんな大きな橋を作るなんて!と思っていましたが・・・実はたくさんの釘が使われています・・・。
平成の架け替えの時に使った和釘、かすがいはなんと29,000本弱!
昭和のキジア台風で流失する前の旧橋もにも、しっかりと釘は使われていました。
あれ?釘1本どころか何万本も使ってますね(;^_^A
一説によると、アーチの桁を組み上げる際に、釘を使わずに巻金(まきがね)という帯鉄(おびてつ)によって各部材を束ねて固定していることから、このような「1本も釘を使っていない」という表現が生まれたのではないか、と言われています。
どちらにしても、素晴らしい技術が合わさって生まれた名橋です^^
まとめ
錦帯橋を支えるアーチ構造や橋脚についてご紹介しました。
建築については全くわからないので、石の橋脚にどうやって木の橋桁をくっつけたんだろう?とか、河川の上でどうやって作業したんだろう?と疑問がいっぱいでしたが、調べることで、当時の人々の工夫や技術の素晴らしさを知ることができました^^
世界的に珍しい木造アーチ橋の錦帯橋。これからの未来にも、郷土の誇りとしてその姿を維持していきたいですね。