「きびる」という方言、聞いたり使ったことはありますか?

小さい頃、父や祖父母が使っていたのを聞いた記憶があるものの、今ではまったく耳にすることがなかった方言。

それが先日、家電量販店の若いお兄さんが言った、「このアース線は「きびって」いいですよ」。

聞いた瞬間、何十年ぶりかに聞いた「きびる」に、驚きと懐かしさが込み上げてきました!

「きびる」について調べてみたところ、山口県だけではなく、九州や四国、中国地方でも使われているとのこと。
じつは、山口県だけの方言ではないことを知って、少し残念に思いました・・・。

そこでこの記事では、山口県民をはじめ、多くの人が懐かしむであろう方言、「きびる」の意味、使い方を、調べてまとめてみました。

※「きびる」がどこで使われているかについて、スレッズでいただいたコメントを参考にしています。

方言「きびる」の意味と使い方を例文で解説

「きびる」の基本的な意味は「結ぶ」「しばる」です。

主に物をひもで固定する動作を表す言葉として使われます。

具体的には、次のように使います。

「きびる」例文

★ その紙の束、きびっちょってー(結んでおいてね)
★ 髪の毛きびらんとよ(髪の毛を結ばないといけないよ)
★ 台風が来るからその自転車きびっておかんと飛んでいこうが(自転車を結んでおかないと飛んでいくよ)

【地域別】「きびる」はどこで使われている?

山口の「きびる」・日常会話への使われ方

山口県で「きびる」といえば、「ひもを結ぶ」「髪をしばる」といった意味でよく使われます。

特に年配の方にとっては日常的な言葉で、子どもに教えるときにも自然に使われてきました。

お年寄りの方が使っていたのを、その子供世代である40代後半~50代以上の方々が聞いて使っていた、という感じでしょうか。

なんたん
なんたん
父や祖父母が使っていたように記憶していますが、今ではほとんど使わなくなりました。
子どもたちは「きびる」という方言自体、まったく知りませんでした
中には、山口県中部、西部にお住まいで、生まれてから一度も聞いたことがないという方も。

年代やお住まいの場所によって、「きびる」への認識が異なるようですが、今ではあまり使われていない方言なのかもしれません。

つぶた
つぶた
もちろん、今も使っているという方もいらっしゃいましたが、少数派なのかも・・・
調べてみたところ、やまぐち教育先導研究室が取り組んでいるプロジェクトに、「まなびで‟きびる”プロジェクト」というものがありました。

山口県では「きびる」という方言が廃れ気味な印象がありましたが、県のプロジェクトに方言が使われていたとは。意外でした!

九州の「きびる」・イベント名にも使われる!?

九州でも「きびる」は広く使われています。
やはり、若い方よりも年配の方が使う方言のようです。

福岡や熊本、大分など、九州全域で、「しばる」「くくる」「結ぶ」と同じ意味で用いられます。

地域によっては「くびる」という発音に近い場合もあるそうで、熊本では「きびる」を「くびる」とも言うそうですよ。
地域ごとに少し違いがあって面白いですね。

九州では地域によって「きびる」がよく使われるようで、イベントや会社の名前にも使われています。

たとえば、熊本、鹿児島では、天草市牛深町と出水郡長島町にある2つの島を結ぶ「キビルフェス」というイベントが開催されているのだとか。

福岡では、舞台芸術に関わる全ての人に向けた「キビるフェス」というお祭りもあるそうです!

地域、年代にもよりますが、山口よりも九州の方が、今も「きびる」が日常に使われているのかもしれないですね。

四国の「きびる」・香川では全く違う意味で使われる

四国でも「きびる」が残っており、とくに愛媛でよく使われるとのこと。

意味は山口や九州とほぼ同じで、「結ぶ」「しばる」です。

おもしろいことに、同じ「きびる」でも、香川では「惜しむ」の意味で使われているそうです。

「結ぶ」と「惜しむ」では、全く意味が違っていて、不思議ですね。

なんたん
なんたん
どういう歴史があって、こんなに違う意味になったのか、調べてみたいなあ

中国地方の「きびる」・隣の県でも使い方に違いあり

山口のお隣、広島では、「きびる」はあまり一般的ではなく、「くくる」が「きびる」にあたるようです。

お聞きしたところによると、広島でも使うという方もいらっしゃるので、山口県寄りの広島県西部の方で使われることがあるのかもしれませんね。

つぶた
つぶた
山口でも「くくる」は使うことがあるから、山口は九州と広島の真ん中あたりってことかな?
同じく山口のお隣、島根では、浜田市周辺では「きびる」を山口と同じ意味合いで使うようです。

浜田市は島根県の中でも西側なので、地理的にも言葉の交流があったのでしょうか。
島根の東側で使われているかは、ちょっとわかりませんでした。

「きびる」の語源は?

「きびる」という言葉は、古語である「くびる」に由来するといわれています。

「くびる」は熊本、大分などで今も使われている言葉で、「きびる」と同じく、「結ぶ」「しばる」の意味で使われており、「くびる」が訛って、「きびる」になったと考えられています。

「きびる」の大元の言葉である「くびる」には、一部では「縊る(くびる)」=「首を絞める」という意味もあったそうです。
しかし、方言としての「くびる」は、「結ぶ」「しばる」の意味で使われています。

現在は、あまり使われることがなくなった「きびる」という言葉。
ですが、今も農作業や日常の場面で、年配の方を中心に使われるのを耳にできますよ。

まとめ

方言「きびる」について、意味や使われている地域などをまとめてみました。

「きびる」は、山口だけでなく九州・四国・中国地方の一部など、西日本で広く使われている方言です。

なんたん
なんたん
どちらかというと、九州で主に使われて、その周辺である山口、四国などにも伝わった感じかもしれないですね

意味は「結ぶ」「しばる」が基本で、昔ながらの生活の知恵と結びついた言葉でもあります。

今では若い世代にはほとんど使われなくなり、なかなか耳にすることがありませんが、方言の魅力や地域性を伝える大切な言葉といえますね。

山口や九州を訪れた際は、そんな方言にもぜひ出会ってみてください^^