近年、赤身肉がブームになっているのをご存じでしょうか?

本当にお肉が好きな方、脂の摂り過ぎが気になる健康志向の方々が、肉本来のおいしさと食感を味わうことができ、低脂肪でヘルシーな赤身肉を好んで食べるようになりました。「驚くほど柔らかくておいしい!」とメディアやSNSで感想を発信する方もおられ、赤身肉が注目を集めるようになりました。

また、霜降り肉では脂が多すぎ、赤身肉でなければおいしく完成しないドライエイジングによる熟成肉の人気が高まっているのも、赤肉ブームの追い風になっているようです。

その身肉を持ち味とする和牛が、今回ご紹介する「無角和種(無角和牛」)」です。

山口県だけで飼育されている上質な赤身肉の和牛で、銘柄はなく「無角和牛」の名前で市場にでています。
とはいっても、月に3~4頭しか出荷されないので、一般的なスーパーや精肉店では取り扱われていません。プロの料理人の方でも数か月待ちで入手されるようです。

この記事では、そんな無角和牛について調べたこと、肉を取り扱っている通販や販売店、無角和牛の料理やステーキが食べられるレストランについてご紹介していきます。




無角和牛について

はじめに、和牛無角和牛について簡単にご紹介しますね。

和牛とは?

「和牛」とは、日本の在来種をもとに作られた食肉専用の牛のことです。
単に日本で飼育・加工された牛(外国から輸入した牛も含む)を指す「国産牛」とは区別されています。

和牛と呼ばれるのは、「黒毛和種(くろげわしゅ)」、「褐毛和種(あかげわしゅ)」、「日本短角種(にほんたんかくしゅ)」、「無角和種(むかくわしゅ)」の4種類だけです。

中でも黒毛和種は和牛全体の9割を占めていて、高級な霜降り肉として有名な「松坂牛」や「米沢牛」がこれに含まれます。

一方、和牛の中でもっとも飼育数が少ないのが赤身肉の無角和種です。霜降り肉の需要におされて売れ行きが低迷していましたが、グルメ志向や健康ブームで再び人気が高まってきています。

無角和牛はどこで飼育されている?

無角和牛が飼育されているのは全国で山口県だけ。そのほとんどが阿武町(あぶちょう)にある「無角和牛の郷」で育てられています。
阿武町は県の北部、日本海に面した自然豊かな町。牛の堆肥を農作物の肥料に、稲わらや草を牛のエサにする循環型の農業に取り組んでいて、安心安全の農畜産物の生産に力を入れている町です。

無角和牛の特徴

たくましい立派な体格ですね!
見た目は名前の通り角がなく、毛色から蹄(ひづめ)まで全身黒一色。四肢が短く肩とモモが大きく育つ典型的な肉用牛の体型をしています。

祖先であるアンガス牛は世界三大肉用種といわれ、近年の赤身肉ブームの先駆けともいわれる牛。無角和牛はその特徴を色濃く残しているといえます。

勇猛そうに見えますが、性質は穏やか。頭もよく、好き嫌いせず粗飼料(牧草やワラなどの草類)をよく食べ、成長が早く、生涯の出産回数も12~13頭(黒毛和牛のおよそ2倍)と、農家の方にとって育てやすい牛でもあります。

肉質はサシが少なく赤身が柔らかいのが特徴です。
阿武町では、地元の牧草や稲わらを主に良質な飼料をエサとし、豊かな自然の中に放牧してのびのびと飼育しています。健康的なエサと環境を与えられ、一頭一頭大切に育てられる牛の肉は安心安全でもありますね。

無角和牛の誕生と歴史

無角和牛の歴史は、1920年(大正9年)にはじまります。

畜産試験場中国支場(広島県)で、欧米から輸入したアンガス牛(正式名称:アバディーン・アンガス牛)に黒毛和牛を掛け合わせ、雄牛:小雀号(こがらごう)が生まれました。

この小雀号を種牛として山口に迎え、在来の黒毛和牛と交配を重ね「無角防長種」が誕生。1944年(昭和19年)に「無角和種」として品種認定されました。

その後、無角和牛は順調に生産頭数を増やし、1963年(昭和38年)には10000頭に達する勢いでした。

ところが、昭和40年代以降、消費者の好みが「霜降り肉」へと変わり、「赤身肉」の無角和牛の消費量は落ちていきます。

牛肉の輸入自由化の影響も大きく、平成になると無角和牛の子牛の値段は黒毛和牛の半値近くまで落ち込み、それにともなって頭数も減少。1994年(平成6年)には250頭余りにまで減ってしまいました。

同年9月に山口県と阿武萩の9市町村、農協、経済連が参画し、第3セクター方式による無角和種振興公社が設立されます。無角和牛は、地域と企業の力で絶滅の危機から再生を目指すことになりました。

平成13年に全農が始めた通販サイト「JAタウン」。無角和牛肉の販売を始めたものの、なかなか売れませんでした。やがて、テレビ番組で無角和牛の価値が実証されたり、著名人が「食べてみておいしかった」という感想を熱いコメントで発信するなどした結果、だんだん一般に知られるようになり、少しずつ売れ行きがよくなっていきました。

しかしながら、黒毛和牛に比べるとまだまだ値段が低いこともあり、飼育頭数は約200頭という種の保存には厳しい状況で今日に至っています。

無角和牛の通販・販売店は?

無角和牛の肉を取り扱っているお店を調べてみました。
月に3~4頭しか出荷されないというとても希少な肉なので、入荷の時期や値段について予めお店に問い合わせをされると安心ですね。

<通販>

◇ JAタウン
山口・無角和牛の商品一覧
毎月数量限定販売で、決まった日に一斉発送されます。

<販売店>

◇ ギンチク牧場 株式会社
〒747-0064 山口県防府市高井205-1 地図
電話: 0835-24-1793

◇ 道の駅 萩しーまーと「和肉のあんどう」
〒758-0011 山口県萩市椿東 前小畑2区4160−64 地図
電話:0838-24-4937(道の駅 萩しーまーと)

◇ うめや精肉店
〒753-0056
山口県山口市湯田温泉2丁目1−24 地図
電話: 083-922-0342

この他に、コープ山口の店舗でも販売されているようです。

無角和牛の料理やステーキが食べられるレストラン

山口周辺地域の食事処やレストランを調べてみました。
レストランでは、無角和牛が入荷した時だけしかメニューに載らないようです。「確実に食べたい!」という方は、事前にお店の方にご相談されるとよいですね。

それでは、道の駅阿武町にあるお店からご紹介します。
「無角和牛の郷」を訪れたらぜひご賞味いただきたいメニューです。

◇ ダイニングカフェ846

◇ はじまりのレストラン「かしま」

ここからは、阿武町以外にあるお店になります。

◇ レストランMitsuwa 地図

住所:〒754-0894 山口県山口市佐山1686 
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◇ Restaurant Tailla レストラン タイラ 地図

住所:広島県広島市中区十日市町2-2-8
TEL; 082-293-1125

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◇ Harmonie玄 地図

住所:福岡県福岡市中央区西中洲9ー4 Spazio4階
TEL:092-231-9540

<番外>

無角和牛のステーキに関連して、岩国市にある畜産業者「安堂畜産株式会社」さんが、無角和牛熟成肉のステーキ実食レポートを掲載されているのをみつけました。

「無角和牛の熟成肉とはどんなお味なのか?」とても貴重なレポートで、なんともおいしそうな感想となっておりましたのでご紹介させていただきますね。

「希少種・無角和牛のこれまた激レア!熟成肉」実食レポート

まとめ

和牛の中でも幻の肉といわれる「無角和牛」についてご紹介しました。

無角和牛の名前だけは聞いていたものの、歴史や肉については何もわからず、初めて知ることばかりでした。
調べていく中で、この牛や生産者を絶やさないように、守っていくために、自治体や業者の方々が尽力されてきたストーリにも出会いました。

これほど大切にされている無角和牛と、その牛を育てておられる農家の方々。環境にも体にも優しい農産物を生産する「無角和牛の郷」の取り組みを知って、「おいしくいただいて、人に紹介して、応援していきたいな」と思いました。

上品で深いコクがあり、「この肉を食べたら、ほかは食べられない」といわれる無角和牛の肉。
出会うことができたら貴重なチャンスです。ぜひ味わってみてください^^